1日12時間働きながら小説を書くための方法

小説を書くには時間が要る。

それに加えて、静かな部屋と大きな机。熱々のコーヒーとお気に入りの音楽があれば申し分ない──そんなふうに思っていないだろうか?

 

小説を書く=なんだか高尚な行為

 

かく言う私も、実際に書いてみるまではそう思っていた。だが、実際に書いてみると、いかに自分の固定観念が凝り固まっていたのか思い知らされた。自分への備忘録も兼ねて、経験したことを共有しようと思う。

 

小説を書こうと思い立った時、私にとって最も大きな問題だったのは「書く時間がない」ということだった。

平日、私は13時間くらい働いている。自分の時間が自由に使えるのは、週に一日の休日だけだ。なんとか時間をやり繰りしても、執筆に費やせる時間は平日だと2時間が限度。

 

だが、テクノロジーが身の回りに溢れている昨今、スマホを使えば「時間」の問題など物の数ではない。

思いのほか簡単に、小説は書けるものなのだ。

そう、思いのほか簡単に。お手頃に。

 

1: 準備編

時間がない──これを解決する特効薬は、「極力PCを開かないこと」だ。

スマホが普及した現代、これを使わない手はない。最近のスマホは、何だってできる。テキストも書けるし、画像も編集できる。プロットも練れるし、リサーチだってできる。なんだったら、製本用のPDFすら作成できる。

 

スマホを活用して隙間時間をフル活用する。

 

「時間がない」問題を解決するためには、これが最も有効な手段だ。

 

1-1: ストックする

 

小説を書くには大きく分けて3つの段階がある。

  1. 準備する
  2. 書く
  3. 直す
準備段階では、ありとあらゆるものをストックする。

思いついたアイデア、人物、印象的な言葉、風景──なんでもストックして、1カ所に集める。それらを大量に溜め込んで、ある程度の量になってくると整理してまとめる。

 

「溜め込む(ストックする)→ 整理する」このサイクルを繰り返す。

 

オススメの方法は、1つのプレーンテキスト(.txt)を作って、そこへ何でも放り込む方法だ。プレーンテキストだと、OS・デバイスを問わず開くことができるし、何よりも動作が軽い。

 

小説 書き方

 

ストックするのは、ありとあらゆるもの。

ストーリーのアイデアとなる「特異な状況」、キャラクター、印象的な言葉、人物の描写、場面の切り替え、思い浮かんだプロットなどなど。

普段小説を読んでいて、「あ、こんな言葉知らなかった」という単語もストックしておけば、書くときに参照できる。

登場人物も、一から作り出すのではなく、「おぉ! 面白い人がいるな」と思ったら観察してストックしておく。風貌はもちろん、性格や思想、立ち居振る舞いや話し方に至るまで、言葉で書き記しておく。こうすれば、人物についてあれこれ頭を悩ませて時間を食う心配もない。

 

ほかにも、小説の中で出会った絶妙な描写や言い回しも、ストックしておく。

気になった映画のワンシーンや漫画の1コマも、プレーンテキストに文字情報として記しておく。

映像やイラストも、自分の言葉を使って文字情報に変換しておけば、執筆する段になって言葉が浮かんでこないと頭を悩ますこともなくなる。

 

ストックが増えてきて、1つのファイルでは管理しきれなくなった場合は、「アイデア」「キャラクター」「リサーチ」など目的別にファイルを分けてもいい。

 

1-2: ストーリーの最小単位:変化

 

プレーンテキストがある程度のボリュームになってきたら、次の段階へと進む。ストーリーの最小単位、つまり「変化」を考える。

ストーリーとは、端的に言ってしまえば「AからBへと状態が変わること」だ。

 

充足した生活から人生のどん底へ、もしくはその逆。(前者だと『グッドフェローズ』後者だと『007 スカイフォール』)

内気な性格の人が勇気を出して行動を起こす(『英国王のスピーチ』)

その変化の候補が浮かんだら、「誰が」「どうやって」変化するのかを考える。

  • ギャングに憧れていた少年が夢を叶えてイッパシのギャングになるが、徐々に人生が下り坂に向かい始める。結果的に、主人公はすべてを失う。
  • 失意のどん底にある英国スパイが、鈍った体を鍛え直して敵に立ち向かう。その過程で自身の過去を見つめ直す。
  • 吃音に悩む内気な英国王は、望んでいないのにも関わらず全国民に向かってスピーチする必要に迫られる。そのためには自身の欠点を克服する必要がある。
「誰が」「どうやって」変化するのか、その過程さえ出来上がればストーリーの骨格部分は完成したも同然だ。あとは、その骨に肉をつけていく作業に入る。

 

1-3: プロットを考える

 

「プロット」──なんとなく曖昧に定義されがちな、もの書き特有のこの言葉を使うのはちょっぴり抵抗があるのだけれど、ここでは「ストーリー中で起こる出来事の塊」と定義する。

 

AからBへと変化するのが「ストーリー」──まずは「B」の地点、つまりエンディングを考える。

ストーリーの最期、主人公はどうなるのか? ヒロインとくっつくのか? それとも死ぬのか?

 

最期の一行でどうなるのか、これを最初に考える。

 

これができたら、エンディングから遡って一連のプロットを考えていく。

最初にヒロインと出会って、それから仲間と合流して、最初のボスが出てきて……といった具合に。

 

小説 プロット 書き方

 

ストーリーの最初からエンディングまで、一連のプロットを1つずつ書き出していく。プレーンテキストのファイルを新たに作り、1行に1イベントずつ箇条書きにしていく。こうすれば、完成した時に一目でストーリーの全体像が掴めるし、何よりも動作が軽い。

 

ストーリー中で起きる出来事を1行1イベントで書き出し終わったら、それを上から順にたどってみる。これがストーリーの全体像になる。

 

1-4: リサーチ

 

準備編で最も時間を要するのが、このリサーチ作業だ。しかもたちの悪いことに、リサーチ作業には際限が無い。

つまり、やろうと思えばいくらでもできる。しかも、ネットを使うので誘惑が多い。Twitterやら、Amazonやら、2ちゃんねやら、誘惑だらけである。

 

ここでも、スマホの出番だ。

まず、リサーチ作業で「知りたいこと」「分からないこと」をリスト化しておく。あとは、隙間時間を使ってこのリストにある「知りたいこと」を1つずつ調べていく。

電車の待ち時間、朝のトイレに入っている間、タバコを吸っている5分間──少しでも時間があればスマホを取り出してリサーチ作業をする。

 

「リサーチ」というタイトルのプレーンテキストファイルを作って、そこへ「知りたいこと」の答えをWebサイトやら資料からコピペして貼り付ける。気になった箇所は全部コピペして貼り付けておく。

知りたいことリストが全部終わったら、「リサーチ」のテキストファイルを見やすいように整理する。

 

2: 作業編

 

「仕込み8割」とよく言われるが、小説を書くのも例外ではない。

準備さえしっかりできていれば、あとはひたすら遮二無二になって書き進めるだけである。(といっても、言葉が全然出てこなくて発狂しそうになったりするのだけれど、これは風邪と同じで時間が経てば治る)

 

ここでは、ひたすら書き進めることに専念する。文体とか、形とか、体裁といったものは全部かなぐり捨てる。「最期の一行にたどり着くこと」──ただこれだけを考える。体裁は書き終えてから修正すればいい。今はとにかく書き終えることが先決だ。

 

ここでもスマホを使う。準備さえしっかりできていれば、デバイスなんて何だっていい。文字さえ打てれば物語は書ける。ストーリーのプロットを書いたテキストファイルを参照しながら、ひたすらに書き進める。

少しでも効率化を狙うのであれば、下記のツールを使うのもいい。

 

スマホ編
  • 縦式
  • ATOK(iOS / Android)
  • Scrivener
  • Notion
  • Torello
PC編
  • ATOK
  • Notion
  • Scrivener
  • 一太郎
私は、スマホの文字入力にはATOKを使っている。キーボードスタイルにして、画面の半分ほどの高さに調節している。原稿を書くときは、縦書きでないと気持ちが悪いので『縦式』を使う。この縦書きエディタ、動作も軽快だしPDF出力もできる優れもの。ここまで揃って無料なのだから使わない手はない。全力でオススメするアプリ。

 

 

資料集めやリサーチでEvernoteを使っている人も多いだろう。だが、そんな人には断然Notionをオススメする。鈍重なEvernoteと比べて、Notionは圧倒的に軽い。そのうえ、見た目も美しいし、同期も早い。まだ知名度は高くないが、私は全力でNotionをオススメしたい。

 

Notionにできることをざっと列挙すると、

  • Evernote的なWebクリッパーとして使える
  • 表の作成
  • カレンダーの作成
  • 画像のギャラリー表示
  • 後述のTorelloのようなカンバン形式で表示できる
  • Google Driveのファイルを扱える
  • コードも書ける
  • Webリンクから自動的にブックマークを作成
これ以外にも沢山ある。何でもできる圧倒的自由度の高さ。まるで頭の中を丸ごとPCに吐き出すように使える。

基本的な使い方は、こちらの記事を参考に。
参考 知的生産ツール「Notion」は、現代人を悩ます”情報の散らかり”から私たちを救うUNLEASH

 

プロット管理でオススメしたいのが、『Trello』だ。本来はプロジェクト単位でのタスク管理ツールなのだけれど、カードを並べ替えたりできるホワイトボード的な仕様になっていて、これがプロット作成にうってつけなのだ。

 

Trello 小説

 

大抵の場合はテキストファイルで事足りるのだが、プロットの複雑なサスペンス・ミステリーものになると1行1イベントの情報量では物足りなくなってくる。そんな時には、Torelloこそが最強のソリューションだ。

予算に余裕のある人にオススメなのは、『Scrivener』だ。準備段階から執筆、推敲に至るまで全部の行程を1つのアプリで済ませることができる。Windows版は開発が遅れているが、Mac版のScrivener3では縦書きにも対応している。Dropboxを経由すれば、iOSとも同期することができる。小説を書くあらゆる段階の、様々な情報を1箇所で管理できるのはScrivenerしかない。

 

小説を書くすべての人の救世主、『一太郎』はもはやマストアイテムだろう。

辞書、連想変換、表紙作成、文章校正、小説投稿サイトに対応したルビ記法──これでもかと言わんばかりに、物書きのために特化した機能を取り揃えている。製本する際のPDF出力も、塗り足しサイズまで含んで作成できるので、買って損はしないはず。まさに「お値段以上」

 

3: 推敲編

 

ひとまず書き終えたら、はやる気持ちを抑えて数日は寝かせる。時間をあけてから、書き上げた文章に目を通す。

「うわぁぁぁあぁぁぁぁぁ」と叫びたくなるくらい、気になる所が目につくはずだ。不思議なもので、時間を置くと自分の間違いが次々と目につき始める。書き終えてすぐよりも、ある程度時間を空けた方がいい。

 

頭の中からストーリーに関するあらゆる情報を閉め出す、冷却期間のようなものが必要なのだ。

 

4: トラブルシューティング

 

「仕込み8割」──準備さえ万全なら少しも滞ることなく最後の一行まで書き進められるのか。

物事そう簡単にはいかないのが世の常。どれだけ完璧に準備していようとも、筆が止まる瞬間は必ずやってくる。言葉が浮かんでこない、自分の書いている文章が分からなくなる、無性に不安を感じる──これらの原因の多くは、「構成が煮詰まっていない」もしくは、「メンタル的な不調」のいずれかである。

 

構成が煮詰まっていない場合は、映画のように「絵コンテ」を描いてみる。プロット(何が起こるか)以外にも、シーンの地図や構図、キャラクターの視点から見えるもの、キャラクターの感じる感覚や感情などをヴィジュアルと共に描いてみる。紙にペンを走らせているうちに、思考は輪郭を帯び始め、いつしか次の言葉が浮かんでくる。

 

メンタル的に不調をきたしている場合は、寝るのに限る。身体を動かして、ご飯をしっかり食べて、プロテインを飲んで寝れば万事OK牧場である。人間には波がある。調子の良い日もあれば、当然悪い日だってある。だが、止まない雨がないように、いつまでも続く不調もない。いつかブレイクスルーの起きる日が来る。ただ、その時まで待ち続ける。

 

小説を書くのは、多くの人が考えているほど大袈裟な行為じゃない。

大きな書き物机も要らないし、まとまった時間も必要ない。

ただ、描きたいストーリーと、書きたいという衝動さえあればいい。

 

みんな、ストーリーを持っている。誰かに伝えたい想いを、語るべき物語を持っている。

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