ホワイトアルバム2:神ゲーを越えた神ゲー

ホワイトアルバム2

* 以下、本編(IC〜Codaすべて)のネタバレを容赦なくふんだんにぶちまけるので注意。未プレイの人は今すぐブラウザバックを押すんだ。ひょんな好奇心からこの記事をスクロールしたあかつきには、ボクが初代眷属末代に至るまで呪ってやるからな……

えー、ワタクシ、精神的に死んでおります。これは比喩でも誇張でも暗示でも決してなく、文字通り、完全にして完璧に精神が死にました。玉砕/粉砕/破砕/爆砕──もう木っ端みじんですわ。ホンマに……

もうじき齢30を迎えようとしている独身男が年甲斐もなく、恥も外聞もなく、午前4時にPCモニターの前でおいおいと泣きじゃくるハメになろうとは……よもや1週間前のボクは想像だにせず……

いや、もうね。こんなに号泣したのなんて、おそらく3年ぶりくらいじゃないのかな。今年に入ってからイッキ見した『ゲーム・オブ・スローンズ』 最終章たるシーズン8に到達するまで幾度となく涙したけれど、ここまで声を上げて本気で泣きじゃくりはしなかった。涙がほろり。そんな程度だった。

色々と言いたいこと──ぶちまけたい感情はあるんだけれど、ひとまずこれだけは言わせてくれ。

これ、神ゲーであると同時にゲームじゃないよな。もはや経験・体験だよな。リアルでもこんなに精神抉られたことなかったわ!!

でもって、かずさ可愛い!

おそらく国内で最も信頼の置ける、エロゲのレビューサイト『批評空間』において平均中央値95というダントツを叩きだし、堂々と歴代2位の座を占めるかの名作『ホワイトアルバム2』

何の気なしにDMMのセール作品を漁っておったところ、たまたま目に飛び込んできたのがこの作品でした。最後にやったエロゲといえば、『マブラヴ オルタネイティヴ クロニクルズ』──それもおそらく5年以上前の話。

そんな絶賛エロゲリハビリ中のボクにとって、『ホワイトアルバム2』はあまりにも攻撃力が高杉晋作でした。

学祭に向けて特訓する思い出づくり。成功を収めた開放感から春希に思いを伝えるヒロインたち。そして狂い出す運命の歯車……「ずっと三人で」そう呟いた雪菜の願いは叶うはずもなく。

年を重ね、時間を経れば経るほど各人をとりまく状況も変化し、関係性も複雑になり……圧巻のボリューム。5年間の歳月──全編とおしてプレイし終えたとき、プレイヤーはたしかにそれだけの時間を過ごしたかのような、途方もない疲労感を覚える。そして、胸が張り裂けそうな切なさも。

 

かずさ√トゥルーエンド:もう止めて! 春希くんのライフはry

ホワイトアルバム2

(C) 2010 Laef, アクアプラス

三角関係。それが暗示する行く末は2つしかない。三人ともがバラバラになるか、3人のうち1人が辛酸をなめるか。

ICの終盤、駅前で春希に思いの丈をぶちまけた瞬間から、ボクは圧倒的にかずさ派だった。ボク、ああいう猛烈なギャップにめっぽう弱いのよね……

ICのラストが近づき、オープニングの回想シーンの真相を何となく察し始めた頃から、もうボクはずっと涙腺うるうるだった。分厚い灰色の雲、飛び立つ飛行機、それを見送る春希。ちらちらと舞い落ちる雪。そして、意気消沈の春希を──自分ではなくかずさを選んだ春希を、それでも健気に慰めようとする雪菜。

次章、CCのオープニングが流れ始めたとき、ボクはもうずっと泣きっぱなしだった。

もう無理ぽ……心の奥底をナイフで突き刺された感じ……もう無理……(´・ω・`)

だが、これはほんの序章に過ぎず、本当の痛撃はこれから待っていた。

CCに突入するやいなや、様変わりした状況に困惑。同時に、「あぁ……かずさはホントにもう居ないんだなぁ」とか、しみじみ思ってまた涙腺うるうる……

でもって、突然ヒロインがどっと増えるわ、春希は案の定で矢吹条、ずっとかずさのことを想い続けているわ、雪菜はミス峰城大付の面影もないほど憔悴しきってるわ……時間の残酷さを痛感。

このときの雪菜はホントに見ていて心が痛んだ。もういっそのこと諦めろよ……って何度思ったことか。でもそれができないのが雪菜なんだよなぁ。どこまでも一途で、まっすぐで、生一本で。かといって、もう二度と会えないとわかっていながらも、かずさのことを諦めきれない春希の心情も痛いほどわかるし……だってボクかずさ派だし(小声)

CCでも幾度となく涙したんだけど、開桜社のバイトでかずさの記事を書くシーンが一番ヤバかった。もう二度と取り戻せない思い出をもう一度思い出して、かずさのことを思って記事を書く──こんなの、自分の心に包丁を突き刺すようなもんじゃないか。でもって、潤み始めた涙腺に容赦なくふんだんに追い打ちをかけるかのように、フラッシュバックで過去のシーンが再生されるんだから、もう我慢するほうが難しい。感涙。やがて号泣。

精神の血を流した甲斐があったのか、バイトにして記事を認められる春希。そりゃそうだよな、あれだけ苦しんだんだもの……とか思っていた矢先にプレゼントされる冬馬曜子の演奏会チケット。

この選択肢がマジで鬼畜!!!

いや、ようやく雪菜が良い感じに調子を回復し始めてて、よしよし……なんて胸を撫で下ろしていた直後にコレですよ!

かずさに会える可能性が万が一にもあるのなら、これは横車を押してでも行きたいと思うのが春希ってもんじゃないですか!! 我々かずさ派の宿命じゃないですか!!

で、そんな欲望に従った結果、雲行きが怪しくなって袋小路に迷い込むっていうね……胸をかきむしられるような思いを抱きながら、泣く泣くコンサートに行かず、武也と一緒に二年参りへ合流したと思ったら……

あんた、まさかのすぐ側にいたじゃないの!! かずさ、そこにいたじゃないの!!

まさに「志村うしろ!」状態ですよ。ヒッチコックの常套手段。スピルバーグの十八番。ゼメキスの殺し文句。

いやぁ、これがマジで辛かった……

学生時代のライブの思い出や、温泉旅行の思い出と同じなんだよなぁ。すぐそこにあるけど、絶対に届くことはなくて。その不可逆性が胸を引き裂くような哀切を生み出すわけで。

雪菜のために、かずさの思い出を封殺した春希──毎夜毎夜、電話越しにギターを弾いて聞かせる。雪菜が3年間待ったように、今度は春希が3年間待ち続ける。そんな努力が実を結び、心も身体もようやく結ばれたと思ったら……すべてが丸く収まったかと思ったら……ストラスブールに現れたのは、冬馬かずさじゃないですか!

しかも、絶対追いかけてきただろって一目で分かるようなズタボロの足で雪の上に突っ立ってるじゃないっすか!

そもそもICとCCの二部構成だと信じ切っていたボクにはCodaの存在なんて寝耳に水だったわけで、よもやかずさと再開できる可能性なんてはなから諦めていたわけなのですよ。それがまさかの再会……

かずさファンとしては、もちろんテンション爆上がりなわけでございますが、それにしても間が悪いというか。なるべくしてこうなったというか。

(;´༎ຶД༎ຶ`;´༎ຶਊ ༎ຶ`;´༎ຶ▽ ༎ຶ`)……ナナナナンデ……ドウシテ今さら……あぁ、死ぬ……

しかも、やたらとデレデレしてるし……なんか可愛いし

Codaのかずさ√には色々と、これでもかと言うほど容赦なくHPを削られたわけなのでございますが、とどめの一撃はなんてったってトゥルーエンド。雪菜とは2年もの間、愛を育んできたわけで、それがそうそう簡単に断ち切れるかというとそんなはずもなく。でもって、プレイヤーの傷を抉るようなかずさの愛の告白。ICクライマックスのかずさに輪をかけて正直な愛の告白──それは5年間ため込んでいた思いが一挙に噴き出したことの裏返しでもあるわけで。

あぁ……切ない……(´Д`)ハァ…

そして、かずさを選ぶということは、積み重ねてきた雪菜との愛をばっさりと断ち切るという冷然たる事実に他ならない。たとえそれが周囲の人間すべてを傷つけることになったとしても。武也との友情を断ち切り、友人たちの関係に修復不可能な大傷を刻み、職場からは非難囂々。

なによりも一番辛かったのは小木曽での修羅場すぎる修羅場。父ちゃん、母ちゃんを前にして己の罪を打ち明ける……うん、ただの拷問以外の何ものでもないよね

マジで心が引きちぎれるかと思った。学生時代から第二に我が家みたいな気軽さでお邪魔していた小木曽家。ここにきてその5年間の思い出が怒濤のごとく押し寄せる。

もうボクの涙腺は決壊したダム状態でしたわ……ごめんなさい。マジでごめんなさいって延々と繰り返したくなるような……そう、罪悪感がハンパないのよ、かずさトゥルーエンド。

ずっとひた隠しにしてきた思いがようやく遂げられるかと思ったら、その代償があまりにも大きすぎて辛い。

罪悪感がハンパない!!!

そしてその極限が、雪菜へ面と向かって別れを打ち明ける場面。もうね、いっそのこと春希を刺し殺してくれって何度思ったことか。春希から冷淡に扱われた大学時代でもあの落ち込みようじゃないですか……それが、ここにきて反動的な勢いからプロポーズまで終えた雪菜が、別れ話なんて聞かされたらどうなるのか。それが想像できないわけないじゃないですか。

そして案の定で矢吹条、ぶっ壊れていく雪菜……ホントに罪悪感がハンパない。どれだけ謝っても言葉を重ねても決して赦されることのない罪業。かずさを選んだ時点で、春希はとっくにその十字架を背負う覚悟をしてたはずなのよ。でもね、そこまで明瞭にわかっていながらも、やっぱりみるみる壊れていく雪菜を見ているのはホントに辛い……

トゥルーエンドのラスト、ウィーンへと旅立つ空港の場面。ICの再現で、雪菜が二人を追いかけてくるんじゃないだろうか。武也たちも、なんだかんだいいつつも空港に来てるんじゃないだろうか。そんな甘い想像を抱いていたら、まぁそれは最後まで容赦なく……

けれど、それだけの罪を春希は背負ってしまったわけで。飛行機が離陸してのち、ようやく己がどれだけ多くの人を傷つけたのかしみじみと実感した春希が、いたたまれなくなって感涙するシーン。もう、ボクの心は修復不可能寸前までズタボロ。泣きすぎて目が痛い……声が出ない……嗚咽……ゴボェ

結果、いい歳こいたアラサー男子が、コンビニに煙草を買いに行って番号を伝えるとき、涙声になってて店員さんから怪訝そうな顔で見つめられるという体たらく。もうね、Closingが流れてエンドロールが終わっても2時間くらい放心状態でしたわ……もうマジで無理。べつに俺が悪いわけじゃないけど、ぜんぶは二枚舌外交のお節介焼き、春希クンが悪いんだけれど、それでも抑えがたいこの罪悪感は何だ……

欲しいものは手に入り、5年越しの恋がようやく日の目を見たはずなのに、胸を抉るようなこの罪悪感はいったい何だ……

壮大なボリュームのシナリオが終幕を迎えたという達成感よりも、肺腑を衝くような慟哭のほうが大きすぎて、マジで鬱状態になりかけた。

 

意味深すぎるビデオメッセージ

 

かずさ√トゥルーエンドのラスト。意味深すぎる&狂気すら感じるビデオメッセージ。あれはいったい何なのか。「雪菜の日」ってなんだよ。おい武也、なんでそんなに重々しい口調なんだよ…… 「覚悟して受け止めなさい」ってなんだよ。どういうことだよ曜子さん…… 色々と意味深すぎるし、なによりも、深刻そうな面持ちの外野に反してそこに映っている明るさが対照的すぎて空恐ろしさすら感じるわ。

かずさとマンツーマンで話したとき、雪菜の心はすでに失調をきたしかけている。ライターの丸戸史明氏いわく、車に轢かれたのは故意ではなく偶然らしいけれど……雪菜の言動はことごとく乖離していて狂気すらはらんでいる。

ここでいっそのこと虚ろな目をした立ち絵とかに差し替えてくれたらどんなに気持ちが楽だったか……ここまで精神的に失調をきたしながら、それでも気丈に、つとめて明るく振る舞おうとする雪菜の心根が辛い……マジで辛かった

この意味深すぎるラストを見た多くのプレイヤー、とりわけ悲観主義者のプレイヤーが薄々感づいていることだと思うけれど、これはほぼ間違いなく雪菜の精神が崩壊している暗示であるとボクは思う。朗らかそうにギターをひく雪菜。けれど、そのあまりにも朗らかそうな表情が、周囲の反応が、それまでの言動が──それらすべてが暗示するのは最悪の結末……

そして極めつけは「I still love you」という歌詞。やっぱり雪菜はいまだに春希のことを思い続けているのであり、それはこのビデオメッセージが送られてきたのが日本を離れて2年という期間からも明らかである。雪菜と春希が愛を育んだ2年間──ストラスブールでかずさと再開したあの期間。偶然にしてはできすぎている。

思い返せば学生時代、軽音楽同好会にかずさを勧誘するべくフードコートで二人が話したときのように、きわめて隠微な方法でもって雪菜は二人の関係に割り込もうとしたのではないか。

そう考えるとすべてが腑に落ちる。同時に、そこに滲んだ狂気の深さにぞっとする。そしてそれを極めてぼんやりと暗示するだけに留めるこの演出に、なによりようやくエンドロールが終わったと一息ついた瞬間に、何の先触れもなく放り込んでくるあたりにすごく悪意を感じる……

おかげでHPがマイナスになってた俺の精神はこの瞬間に完全に死んだ。オーヴァーキルとはまさにこのこと。

人は悪意ではなく、善意によって人を傷つける

ホワイトアルバム2

(C) 2010 Laef, アクアプラス

5年越しの恋。三角関係。それは、どっちを選んでも誰かが傷つく定められた悲劇である。

学祭のライブ──単一の共同の目標に向かって前進できていたあの頃。学生というモラトリアム期間。周囲のしがらみは皆無。あのとき、3人の間だけが世界のすべてだった。ライブのためという大義名分があった。そしてそれが、抜け駆けを掣肘する抑止力として機能していた。だが、ライブという安全弁を喪失したとき、三人の関係性に影が落ちる。

三人がそれぞれを思って取った行動が、すべて裏目に出る。悪意によってではなく、善意から選んだ行動が結果として互いを傷つける。なんと皮肉な関係性。

そしてそれを象徴するのが、『届かない恋』である。春希のひそかな恋心をしたためた歌詞。「雪菜のため」という大義名分でかずさが授業そっちのけで載せたメロディー。「私たち三人だけの歌」だと信じて歌いきった雪菜。学祭のシーンであえてこれを見せず、ICの最後の最後にもってくるあたりがこれまた憎いというか悪意を感じるというか……

おかげさまで号泣しましたよ。

えぇ、まだ物語も序盤だというのに感涙に咽びまくりましたよ。

CCでは「雪菜のため」にとかずさへの思いを捨て去る決意をする春希。そして結果的に、それが最悪の結末を誘うことになる。「二人のために」ウィーンへと逃げるようにして旅だったかずさ。結果的にそれが春希の思いをさらに増幅させ、大学時代の雪菜を傷つける。なんと皮肉な構図。ぶっちゃけて言えば、当人たちは互いを思いやって行動しているから余計にタチが悪い。これがいっそのこと敵意剥き出しの悪意の塊だったなら、どれだけ救われるか。

学生時代のように「三人いっしょ」という関係性は、Codaでかずさが言うように「三人の平均値」を取ることでしか実現し得ない。みなが妥協し、恋心と友情のミックスブレンド状態を選ぶしかない。けれど、そんなことが到底実現できるわけもなく。三人の関係が友情だった学祭以前の、練習に明け暮れたあの日々ならそれはできる。けれど、時間を経て様々なしがらみにとらわれた三人は、そんな輝ける過去に遡ることなどできるわけもない。

もう戻れない過去の輝き

ホワイトアルバム2

(C) 2010 Laef, アクアプラス

三人の関係性が最もピュアだったあのとき。必死に練習した成果が実を結んだ学祭のライブ。無垢な輝きを放つあの出来事が記憶となったとき──それはもう決して手に入らない、戻ることのできない過去として幾度となくプレイヤーの切なさを助長する。

ピュアであるにはあまりにもしがらみに囚われすぎてしまった社会人。高校生とは違う状況、すこしだけ社会に接している半モラトリアムな大学生時代。それぞれを取り巻く状況が変化するにともなって、その照り返しとして学祭のライブの記憶は輝きを増す。この不可逆性が胸をかきむしるようなカタルシスを生み出す。色あせない思い出としてそこにあるのに、手に入らない。もう戻れない。時間という残虐な枷がそれを赦さない。

『ホワイトアルバム2』がかくも哀切極まるのは──現実ではないのに、現実以上に心を抉るのは、この不可逆性による儚さに収斂されるからだ。思い返せばいつでも鮮明に甦ってくるあの記憶。楽しかった過去。けれどそれはもう手に入らなくて、たしかにそこにあるのに手を伸ばしても触れることすらできなくて。その不可逆性が、積み重ねてきた5年という時間が、那由他の弾丸のごとくプレイヤーの心を削り取る。

そこにあるはずなのに、けれど、とうてい実現しえないというパラドックス。
シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』が、キャメロンの『タイタニック』がとうてい実現しえないがゆえにその美しさを際立たせるのと同じように。

雪のように儚く脆い三角関係。その関係性が決してもう元通りにならないという不可逆性。その儚さこそ、『ホワイトアルバム2』という神ゲーの神髄なのだ。
いや、これはもはや現実を越えた何か。ゲームでありながら現実を凌駕するほど胸を引き裂く、虚構と呼ぶにはあまりにも切なすぎる壮絶な体験である。

 

「なんでそんなに慣れてんだよっ!  雪菜と…何回キスしたんだよ!?」
この台詞、マジで死ぬかと思った……

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です